EV専業となった新生スマート
「スマート」は、元々マイクロコンパクトカーの生産を発案したスイスの時計ブランド「スウォッチ」がメルセデス・ベンツと協業して販売開始したのが始まりです。
メルセデス・ベンツのクルマ作りノウハウを活かしてできた「スマート」のマイクロコンパクトカーは世界で200万台以上販売されました。2人乗りの「フォーツー」や4人乗りの「フォーフォー」などがラインナップされ、特に小型の「フォーツー」はヨーロッパの都市などで今でもよく見かけます。また、ハイパフォーマンスモデルの「スマートBRABUS」といったモデルも登場しました。
2020年にはボルボ・カーズやロータス・カーズを傘下に収める「吉利汽車(ジーリー)」の親会社である「浙江吉利控股集団有限公司(ジーリーホールディンググループ)」が、メルセデス・ベンツ・グループと折半出資により、合弁会社「スマート・オートモービル」を設立しました。
なお「吉利汽車」はメルセデス・ベンツ・グループ株を9.7%取得し、筆頭株主となっています。
新生「スマート」はEV専業メーカーと生まれ変わり、2022年には市販車第一弾となるEVモデル「スマート#1(ハッシュタグ・ワン)」を発表しています。
「スマート#1」はこれまでのスマートで販売していたマイクロコンパクトカーではなく、5人乗り・SUVタイプの電気自動車です。バッテリー総容量66kWh、最高出力は272PS、最大出力は343Nmを発揮します。WLTCモードでの航続距離は420-440km、0-100km/h加速は6.7秒です。
更にはパフォーマンスバージョンである「スマート#1 ブラバス」も登場しています。ブラバス版にはデュアルモーターが搭載され、最高出力428PS、最大トルク543Nm、WLTCモードでの航続距離は400km、0-100km/h加速は3.9秒となっています。
そして2023年9月3日、「スマート#3(ハッシュタグ・スリー)」が正式発表されました。新生スマート「スマート#1」に続く第二弾モデルで、ボディタイプはSUVクーペです。「スマート#1」と同じくベースグレードの最高出力は272PS、ブラバス版では428PSを発揮します。ただしパフォーマンスは向上しており、ベースグレードの0-100km/h加速は5.8秒、ブラバス版では3.7秒となっています。また、航続距離は435-455kmに増えているとのことです。
スマート(smart)はマイクロカーではなくなった
メルセデス・ベンツは新体制となる前、以前の「スマート」時代にも電気自動車を販売していたのですが、この頃は全長2,695mm、全幅1,663mm(スマートEQフォーツー)と、まさにマイクロコンパクトカーと言えるモデルでした。4人乗りの「スマートEQフォーフォー」でも全長3,495mm、全幅1,665mmでした。
そして新生スマートが作る「スマート#1」ですが、全長4,270mm、そして全幅は1,822mmとマイクロカーとは言えないサイズとなりました。
スマート#1、#3のスペック
「スマート#1」「スマート#3」のスペック情報を紹介します。
スマート#1 | |||
Pro + | Premium | BRABUS | |
ドライブトレイン | シングルモーター | シングルモーター | デュアルモーター |
最高出力 | 200kW(272PS) | 200kW(272PS) | 315kW(428PS) |
最大トルク | 343Nm | 343Nm | 543Nm |
0-100km/h加速 | 6.7秒 | 6.7秒 | 3.9秒 |
最高速度 | 180km/h | 180km/h | 180km/h |
バッテリー総容量 | 66kWh | 66kWh | 66kWh |
バッテリー正味容量 | 62kWh | 62kWh | 62kWh |
全長 | 4,270mm | 4,270mm | 4,300mm |
全幅 | 1,822mm | 1,822mm | 1,822mm |
全高 | 1,636mm | 1,636mm | 1,636mm |
ホイールベース | 2,750mm | 2,750mm | 2,750mm |
車重 | 1,788kg | 1,800kg | 1,900kg |
航続距離(WLTC) | 420 km | 440 km | 400 km |
「スマート#3」については今のところ、以下の情報が分かっています。
グレード:「スマート#1」と同じくベースグレード、ブラバス版がラインナップ
最高出力:「スマート#1」と同じく272PS(ブラバス版は428PS)
航続距離:「スマート#1」より長い435-455km(WLTCモード)
0-100km/h加速:「スマート#1」より速い5.8秒(ブラバス版は3.7秒)
発売日情報
新型「スマート#3」はドイツでは早ければ2023年末、他のヨーロッパ地域では2024年初頭に販売開始とされています。
日本国内への導入予定ですが、今のところ何もアナウンスされていません。
スマートは例えばフォードのように日本撤退を公式発表したわけではないですが、以前のスマート時代のモデル販売が終了してから新生スマートについてのプレスリリースなど、情報は一切更新されていない現状なのです。
新生スマートは中国、そして主要なヨーロッパでの展開を開始していますが、日本国内での導入については一切発表がない、といった状況です。
これまで日本でも展開されてきた「スマート」ブランドはメルセデス・ベンツ・グループと「吉利汽車(ジーリー)」とのパートナーシップにより体制が変わり、今後の状況は全く読めないところ。
そしてブランドコンセプトが変わり、以前のフォーツーやフォーフォーといったマイクロコンパクトカーでは無くなってしまったのが残念に思う人もいるかもしれません。
価格情報
「スマート#1」の価格ですが、イギリスでは以下の通りとなっています。
「Premium」:38,950ポンド(日本円換算:約715万円)
「BRABUS」:43,450ポンド(日本円換算:約797万円)
「スマート#3」ですが、ドイツではPro+が43,490ユーロ(約686万円)、Premiumが46,490ユーロ(約734万円)、25周年記念モデルが46,990ユーロ(約742万円)、BRABUSが50,990ユーロ(約805万円)とアナウンスされています。